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Omise Agentを支える技術とその舞台裏

June 6, 2025

さまざまな業界でAI(人工知能)の利活用が加速しており、フィンテック業界も例外ではありません。一人ひとりのお客様に合わせたカスタマーサービスや、不正検知、予測分析、ワークフローの自動化まで、AIは決済分野に大きな変革をもたらしています。

アジア太平洋地域における決済業界のリーティングカンパニーとしてOmiseは、決済分野のイノベーションを推進するために、AIの力を積極的に活用しています。当社の最新の取り組みのひとつがOmise Agentです。これはOmiseの製品やサービスを利用する際に、加盟店を手助けするパーソナルAIアシスタントです。

たとえば、これまでのようにドキュメントを読み込む代わりに、Omise Agentに直接質問するだけで、APIの設定をいちからサポートしてもらうことができます。また、定型業務もOmise Agentが代行します。加盟店は重要な業務に集中できるうえ、時間の節約にもつながります。

Omise Agentはシンプルに使えるよう設計されていますが、その開発は決して簡単ではありませんでした。AWS Summit 2025では、当社エンジニアリング部門のディレクターであるSylvain Dormieuが、Amazon Bedrockを活用した開発プロセスの中で得た重要なポイントを紹介しました。

初期の課題

開発初期の段階で、チームはいくつかの課題に直面していました。Omiseのナレッジベースには包括的なデータが揃っていたものの、AIアシスタントの回答は体系化されておらず、重要な情報が抜けていたり、同じ2つの簡単な質問に対して一貫性のない返答をしたりすることが多々ありました。

AWS Bedrockによるスムーズなスタート

AWS Bedrockの活用により、こうした課題にうまく対応することができました。AWS Bedrockは、主要なAI企業が提供する基盤モデルを使って、生成AIアプリケーションの構築・拡大を可能にする、AWSのフルマネージドサービスです。

AWS Bedrockは、Claude 3.7 Sonnet のような高品質なAIモデルに加え、ワークフローのオーケストレーション、会話処理、ガードレール、そして何よりも評価機能など、開発に必要なさまざまな機能を提供しています。

AIがAIを評価する

Sylvainは次のように述べています。「AWS Bedrockの導入はシンプルですが、高品質な成果を得るためには、慎重なコンテンツ開発と評価が不可欠です」

Omiseでは、ナレッジベースの評価とエージェントのエンドツーエンド評価の両方を通じて、AIのパフォーマンスを測定しています。生成された回答の品質は、「正確性」「関連性」「網羅性」「流暢さ」といった指標に基づいて評価されます。簡単に言えば、AI自身にAIのナレッジギャップを見つけさせ、それに基づいて回答を改善させるという、継続的なフィードバックループを構築しています。これにより、人間の専門家による改善を超えるスピードでAIを進化させることが可能になっています。

Omise Agentの精度をさらに高めていく中で、当社は「賢く」「信頼でき」「実際のビジネス現場で使える」AIツールの構築に注力しています。Amazon Bedrockの力を活用し、AIによる決済の可能性をさらに広げています。そして、これはまだ始まりにすぎません。